シナリオセンター課題:おせっかい:「その死、手助けします」


宇宙人を出したかったモチベーションが大きかった作品です。

タイトル
その死、手助けします
登場人物
堀川卓(27)会社員
シマムラ(24)宇宙人
ヤマノ(42)シマムラの会社先輩
波倉絢菜(26)堀川の彼女
本文
○大通り
堀川卓(27)が波倉絢菜(26)に土下座している。
周囲のやじうまがざわついている。
堀川「捨てないでくれ! 何でもするから!」
絢菜は立ち去っていく。
堀川が土下座をしたまま泣いている。
堀川「絢菜……。ううぅ、死にたい」

○インターネットカフェ『マーズ』・内
スーツ姿のシマムラ(24)が背筋を伸ばしパソコンを操作している。
パソコン画面にタコのような姿のヤマノ(42)が映る。
シマムラはヘッドフォンをつける。
シマムラ「お疲れ様です。無事に1192番惑星に到着し、トランスフォームおよびランゲージインストールまで完了しました」
ヤマノ「さよか、さよか。ほんなら、いよいよ研修最後の課題やな。最後の課題は……」
シマムラが真剣な表情でうなずく。

○公園
堀川はベンチで携帯を触っている。

○インターネットカフェ『マーズ』・内
パソコン画面にツイッター。
HORIKAWAというアカウントの『死にたい。誰か、俺を殺してくれ』というつぶやきが表示されている。
シマムラが画面を見て、微笑む。

○どこかのアパレルショップ
シマムラが物陰に隠れて、服を見ている絢菜を見ている。

○田んぼ道
シマムラが歩いている。
田んぼで農作業をしている老夫婦。

○堀川家・内(夜)
暗いワンルーム。
堀川がはいってきて明かりをつける。
ソファにシマムラがいる。
驚く堀川。
堀川「だ、だ、だ、誰?」
シマムラは手で堀川を静止する。
シマムラ「驚かないでください。堀川さんの『手助け』をしに来たシマムラといいます」
堀川「シマムラ? え、誰? 『手助け』?」
シマムラ「シマムラです。落ち着いてください」
堀川「落ち着けって無理だろ、誰だよ、警察呼ぶぞ、『手助け』って何なんだよ」
シマムラはスーツの内ポケットからナイフを取り出す。
堀川が驚き、操作しようとしていた携帯を床に落とす。
シマムラが堀川のそばに素早く近づき、ナイフを喉元に当てる。
堀川は震えながらシマムラを見る。
シマムラ「何故、死にたいんですか?」
堀川「え?」
シマムラ「だから、何故、死にたいんですか?」
堀川「え? 何を言って……いるんですか? 殺そうとしているのはあなたじゃないですか」
シマムラ「死にたいってつぶやいていましたよね」
堀川「え、死にたい? あっ、ツイッター?」
シマムラ「はい。それで『手助け』にきました。しかし、死んでいただく前に、きちんと理由を本人の口から聞いておきたいんです、理由を話していただけませんか?」
シマムラのナイフが堀川の首に近づく。
堀川「え、意味がわかりません、『手助け』? 理由? どいうことですか?」
シマムラ「理由をお願いします」
シマムラはナイフを堀川の首に当てる。
堀川「(早口で)彼女に振られたんです」
シマムラ「彼女? もしかして波倉絢菜のことですか?」
堀川「そう、そうです、なんで、それを……。あ、ともかく、突然だったし、何故、振られたのか理由もわからなくて、うまくいっていたし、俺、浮気とかもしてませんし」
シマムラ「逆です」
堀川「え、まさか、絢菜が浮気を?」
シマムラ「いえ、そういう逆ではなく堀川さんが浮気相手だったという意味の逆です。調べたところ波倉絢菜には少なくても4人の愛人がいます。旦那さんも合わせれば5人と並行してつきあっていたということになります」
堀川「え? え?」
シマムラ「きちんと下調べもするのが、私が教わってきた仕事のやりかたですから」
堀川「え? 仕事? え? というか俺、浮気相手の1人だったんですか、というか旦那、え、結婚してたの?」
シマムラ「はい。堀川さんは不倫相手の1人であり、順位は4人中の3位です」
堀川は黙ってうつむいてしまう。
堀川「知りたくなかったかも……」
シマムラ「そうですか。しかし、これでわかりました。堀川さんは不倫の相手をしていた波倉絢菜さんに別れを告げられたので死にたいと思った、間違いありませんね?」
堀川「間違いありませんねって、ファミレスの注文確認じゃないんだから……。というか、俺、4人中3位なんですよね? なんで4位のやつじゃなくて、3位の俺が別れを告げられるんですか?」
シマムラ「いい質問です。そこは私も疑問を感じ調査いたしました。結論としては4位の方は1位の方とご兄弟だからだと推測されます」
堀川「……。つまり、4位の方と面倒なことになると1位も失う可能性があるから、3位の俺を振ったと?」
シマムラ「そのとおりです。では、失礼して」
シマムラはナイフを構える。
堀川「ちょっと待って、ちょっと待ってください。いや、俺、まだ死にたくないです、というかなんで俺を?」
シマムラ「気が変わったということでしょうか? 私はただ『死にたい』というあなたの望みを『手助け』したいんです。もちろん、純粋に助けたいという気持ち以外にも課題をクリアしたいという気持ちがないかといえば嘘になりますが」
堀川「課題? いや、というか、死にたいぐらい辛い気持ちだったけど、本当に死にたいわけじゃ……。まだ生き……いや、でも、もういいか」
シマムラ「よくわかりません。どちらですか?」
堀川「なんか自分が情けなくて……。ああ、なんか実家に帰って母親の味噌汁とか飲みたくなってきました」
シマムラ「実家? ああ、農家の?」
堀川「ああ、それも調べてあるんですね、さすがにもう驚きませんよ。おっしゃる通り、うちの実家は農家です。夢を見て都会に出てきましたけど、こんなことなら素直に農家を継いでいればよかったかもしれませんね」
シマムラ「お会いしましたが、素敵なご両親ですね。血はつながっていなくても、あなたのことを実の息子としてきちんと愛してくれています」
堀川「うん?」
シマムラ「もし死ぬのをやめて、実家にか」
堀川「ちょっと待って、今、なんて?」
シマムラ「もし死ぬのをやめて……」
堀川「そうじゃなく、その前! 血がなに?」
シマムラ「ああ、血はつながっていなくても実の息子としてあなたのことを愛してくれていますと言いました。心配しないでください、愛されています、あなたは」
堀川「血はつながっていない? え?」
シマムラ「はい、ご両親からも聞きました」
堀川「ああ、そっか、あ、そうなんだ」
堀川は顔をひきつらせて笑い出す。
シマムラ「どうしました?」
堀川「いや、驚きとか悲しみがこう限界を超えると、なんか可笑しくなるんですね」
シマムラ「で、どうされます? 死にますか? それとも実家に帰りますか? どちらにせよ私に『手助け』させていただければ」
震えながら顔が怒っていく堀川。
堀川「(大声で)なんだよ! その選択! できるか! なんなんだよ、いったい、急に現れて、ナイフ振りまして、『手助け』させて欲しいって、わけわかんねーよ!」
シマムラは真剣な顔で堀川を見る。
堀川は呼吸を整えると、すっきりした表情になる。
堀川「大声出して、すみません。怒鳴ったら、なんかすっきりしました。死にたいとかそういうのももうどうでもいいです。あの、なんか、わかんないですけど、俺のこと『手助け』してくれるんですよね?」
シマムラ「ええ。そうさせていただけると私も助かります」
堀川「そうですか、俺、これから両親のとこに行って話しを聞いてきます、まあ、何か変わるわけじゃないけど。で、そのあとなんだけど、絢菜に復讐したいです、それを『手助け』してくれませんか?」
シマムラ「復讐? わかりました、私に『手助け』させてください」
堀川は肩の力を抜く。
堀川「よかった。そうだ、順番はめちゃくちゃですけど、自己紹介してくれません? あなた、いったい誰なんですか?」
シマムラ「私は宇宙警察を目指しているヒポリック星の……」
堀川、呆然とした顔。