シナリオセンター課題:誘惑:「スヴァディルファリ の三角形」


タイトルのスヴァディルファリは神話にでてくる馬です。神話の中でスヴァディルファリは雌馬に誘惑されます。
タイトル
スヴァディルファリの三角形
登場人物
滝創一(27)会社員
高城真理亜(23)ホステス
赤川忠義(32)暴力団


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本文
〇ラブホテル・一室(夜)
パンツ一丁の滝創一(27)が拳銃を横に構えている。
拳銃の先にはベッドの上でシーツにくるまっている高城真理亜(23)。
滝の視線の先には赤川忠義(ただよし)(32)が拳銃を滝に向けている。
滝、真理亜、赤川は三角形の位置関係。
床には黒いカバンと散らばった札束。
滝M「どうしてこうなった」

〇オフィスビル・玄関前(夜)
T「3時間前」。
疲れた顔の滝がビルから出てくる。
滝「限界だ。二徹とかどんだけブラックなんだ、今日は帰る、帰るんだ」
滝は腕時計を見る。
滝「やべ、終電」
駆け足で去っていく滝。

〇駅前通り(夜)
駆け足の滝と黒いカバンを持った真理亜がすれ違う。
真理亜が振返り、滝の方を見る。
真理亜「似てる……」
滝はふと足を止め、視線を横に向ける。
餃子屋と『餃子定食780円』の看板。
滝はお腹をさすり、時計を見て、またお腹をさする。
餃子屋に向かう滝。
真理亜は滝を見ている。

〇餃子屋・店内(夜)
2人用テーブルに座る滝。
真理亜も入ってきて、滝の前に座る。
滝「え」
真理亜「相席してもいい?」
胸元があいた服を着ている真理亜。
滝は生唾を飲み込み、うなずく。
真理亜「時計気にしていたみたいだけど、終電大丈夫なの?」
滝「え? あ、いや、餃子の誘惑に勝てなくて……。戻って会社で寝ます」
微笑む真理亜。
真理亜「なんか、雰囲気とか意思弱いところとか、私のお父さんの昔にそっくり。ねえ、私と一緒に沖縄に逃げてくれない?」
滝「は? 沖縄? 逃げる? いきなり何ですか?」
滝M「ヤバイ人か? いや、というか超美人、タイプすぎる。理想、まさに運命なのか」
真理亜「色々あってさ、この街にいられなくなったの。でも一人では不安だなって思ってた時に、偶然、すれ違ったあなたに運命を感じて……」
真理亜は滝の手を強く握り胸を強調。
生唾を飲む滝。

〇駅前通り(夜)
手をつないで歩いている滝と真理亜。
滝M「いいのか、いいのか、でも、こんな美人と沖縄逃避行とか、どんなエロ動画な展開だよ、あれか、どっかで撮影しているのか?」
真理亜「ありがとね」
滝は驚き、うなずく。
真理亜は一瞬、もの悲しそうな顔。

〇(フラッシュ)赤川の顔

〇元の駅前通り(夜)
真理亜は首を横に振る。
真理亜「(小声)夢のため。決めたんだ。お父さんに似たこの人なら大丈夫……。私は前に進む」
真理亜は滝の腕をひっぱり、路地にはいっていく。
路地の向こうにはラブホテルのネオンが光る。
困りながら、にやける滝。

〇ラブホテル・一室(夜)
ベッドに座っている滝。
ベッドに黒いカバンが置かれている。
浴室との間にあるすりガラスには、シャワー浴びる真理亜のシルエット。
ベッドの枕元に『透明』と書かれたスイッチ。
滝がスイッチと真理亜のシルエットを交互に見る。
滝はスイッチをオンにする。
すりガラスが透明になる。
裸の真理亜の後ろ姿、背中一面には立派な刺青(いれずみ)。
滝はスイッチをオフにする。
滝は深呼吸。
滝はスイッチをオンにする。
真理亜の背中の刺青。
滝はスイッチをオフにする。
滝は慌ててベッドが降りる。
黒いカバンにぶつかり、カバンが床に落ちる。
滝は出口に向かう。
浴室からバスローブをまとった真理亜が出てくる。
滝は驚き止る。
真理亜は滝の胸元に飛び込む。
真理亜「帰っちゃうの?」
真理亜は上目遣いで滝を見る。
滝は生唾を飲む。
滝は真理亜を振り払う。
真理亜はよろけてベッドに倒れこむ。
バスローブから生足が見える。
滝は足に釘付けになる。
真理亜「いいよ」
滝は生唾を飲みこむ。
滝は服を脱ぎ始め、パンツ一丁になる。
滝の視線にベッドから落ちた黒いカバンが見える。
黒いカバンからいくつかの札束が外にでている。
カバンの奥には拳銃がある。
滝が固まる。
激しくドアが開く音がする。
拳銃をかまえた赤川がはいってくる。
赤川「真理亜さん!」
赤川がパンツ一丁の滝に気がつく。
真理亜はシーツにくるまる。
赤川「どういう状況だ、これは」
滝は赤川が持っている拳銃に驚く。
赤川「お前が真理亜さんをそそのかせて、組の金を盗ませたのか?」
滝はカバンからでてきた札束を一瞥し、赤川の方を向いて激しく首を横に振る。
赤川は札束を一瞥し、拳銃を構えたまま叫ぶ。
赤川「おい、お前、カバンのお金、いったん全部出して、そこに並べろ! 額を確認する」
滝は首を激しく縦にふり、赤ちゃん歩きでカバンに近づく。
滝は札束を拾いベッドに置いていく、カバンの中の札束も取り出していく。
滝は手に違和感を覚え止まる。
カバンの奥の拳銃を掴んでいる。
動きが止まった滝に赤川が気がつく。
赤川「どうした? 手を止めるな! 本当に撃つぞ! 組の金に手をだしやがって!」
滝「違う! 俺は何も知らない! この女性についてきただけだ!」
滝は拳銃を掴んだまま真理亜を指そうとし、拳銃を真理亜に向けてしまう。
滝は自分の手の拳銃を見て驚く。
赤川も滝の拳銃を見て驚く。
赤川「お前、真理亜さんをどうするつもりだ」
滝M「どうしてこうなった。絶対に誤解されているし、この美人を人質にしたところで助かるわけないし、むしろ拳銃を出してる時点で今にも撃たれる可能性はグッとあがってるし、いったい、どうしたらいいんだ……。くそ、2徹のせいだ、頭がぜんぜん回らない、48時間勤務ってどれだけうちの会社はブラックなんだ、いつか過労死するぞって、今、まさに死にそうじゃないか、くそ、眠い、ほんと、眠い、眠い、ほんと、ね……」
滝は目をつぶり、寝息を立てる。
赤川と真理亜が滝の様子を見て、驚いたあとに噴き出す。
赤川「真理亜さん、こいつな何なんですか」
真理亜「さあ、でも、この子は本当に何も知らないわ。私が一人で逃亡することが寂しくなって、誘惑しただけ」
赤川「え、じゃ、やはり真理亜さんが今回の首謀者……、組長に近づいたのも……」
真理亜「そうよ……ずっと前から考えていた。お金を手にいれて、お金のせいで失った自由を取り戻すんだって」
赤川「自由……」
真理亜「でも、一つだけ心残りがあったのは事実かな」
真理亜が赤川を見つめる。
赤川は拳銃をおろす。
真理亜「あなたが組のことや親分のことや今の生き方を大事にしているのはわかる。でも、それでも、私と一緒に逃げて欲しい、私は本当はあなたが……」
滝のいびき、噴出す赤川と真理亜。
真理亜「自制心なくて誘惑に弱いけど、なんか自由に生きている感じがするわね、この人……」
赤川は小刻みにゆれて眠る滝を見る。
赤川は真理亜を見る。
赤川「真理亜、俺も……」
滝の幸せそうな寝顔。

〇ラブホテル・一室(朝)
パンツ一丁で眠る滝、手には拳銃の代わりに3万円と『ありがとう』と書かれたメッセージカード。
滝「(寝言)もう餃子はお腹いっぱい」
滝の幸せそうな寝顔。