課題:盗む「嘘つきは泥棒の はじまりはじまり」

タイトル
「嘘つきは泥棒の はじまりはじまり」
人 物
東堂順一郎(27)会社員
神楽坂正信(42)東堂の上司
阿久津慎吾(31)ヤクザ

小泉銀次(51)東堂の隣人
女性(37)募金集め
店員(20)カフェ店員

狛犬

本文
○居酒屋『太陽の雫』(夜)
東堂順一郎(27)が立ち上がりビールジョッキをかかげる。
スーツ姿、赤い縁のメガネ。
まわりにはスーツ姿の会社員達。
黄色のネクタイをつけた神楽坂正信(42)が笑っている。
神楽坂「おい、飲みすぎて吐くんじゃねーぞ」
東堂「俺、飲んで吐いたことないんで!」
ジョッキを口にもっていく東堂。

○神社(夜)
満月。
立派な境内。
東堂の声「おえええええ」
東堂が狛犬の台座に寄りかかり、吐いている。
東堂「ダメだ、飲みすぎた」
ふらつきながら立ち上がる東堂、狛犬を見る。
東堂「なんだよ、悪いかよ! 俺だってな、頑張ってるんだよ!」
東堂がペチペチと狛犬の頭を叩く、無表情の狛犬。
東堂「あ? なんだよ、嘘だと思ってんのか? 俺が頑張ってるって嘘ついてると思ってんのか? 俺はなぁ、嘘なんて、ついたことないんだよ、へへ」
東堂、狛犬に抱きつく。
まわした腕につけていた安っぽい時計を見る。
東堂「もう、こんな時間、帰らなきゃ」
ふらつきながら去っていく東堂。
狛犬の目が東堂の方を向き、狛犬は一瞬、あやしく光る。

○アパート『ラ・ヴォルール』・外観(朝)
ボロな建物。
『ラ・ヴォルール』と書かれた表札。

○東堂宅・寝室(朝)
スーツ姿、赤い縁のメガネをつけたままベッドに横になっている東堂、手には携帯。
携帯からメロディーが流れる。
東堂は慌てて起き、携帯を耳に当てる。
東堂「はい」
神楽坂の声「(大きな声で)はい、じゃねーだろ、何時だと思ってんだ?」
東堂は慌てて腕時計に目をやる、針は10時を指している。
神楽坂の声「無断で会社に来ないとか、何してんだ、お前?」
東堂「え、あ、いや、あの、すみません、なんか朝から高熱で……。まったく動けなかったもので」
神楽坂の声「ん? なんだ風邪か?」
東堂「そうです、そうなんです、ゴホッゴホ」
神楽坂「風邪ならしょうがねーか、はやく治すんだぞ」
X X X
携帯をベッドに投げ、セーフの手振りをする東堂。
東堂のポケットが膨らんでいる。
膨らみに気がつき、手をいれ中身を取り出すと、黄色のネクタイ。
東堂「うん? なんだこれ? 部長のネクタイ?」
東堂は不思議そうな顔。

○コンビニ・店外
店から出てくる、サンダルにスーツ姿の東堂、手には水のペットボトルがはいっているビニール袋。
募金箱をもった女性(37)、首に星型のネックレスをつけている、が東堂に話しかけてくる。
女性「すみません、今、めぐまれない子供達への募金を集めていて……」
東堂「え、あ、募金? あー、いや、すいません、用事があって急いで会社に戻らないといけないんで……」
女性は東堂の足元、サンダルを見る。
東堂は去っていく。
東堂は立ち止まり、ポケットに手をいれると、星型のネックレスが出てくる。
東堂は不思議そうな顔。

○住宅街・小道
歩いている東堂。
阿久津慎吾(31)が話しかけてくる、阿久津は見るからにヤクザな感じの外見、腕に高級時計。
阿久津「おう、にいちゃん、この辺で『ラ・ヴォルール』っていうアパート、知らないか?」
東堂は阿久津の全身を見て、固まる。
東堂「し、知りません、聞いたこともありません」
阿久津「……、そうか、借金の取立てなんだわ、まあ、邪魔したな、そうだ、にーちゃんも金に困ったらうちに来いよ」
立ち去る阿久津、角を曲がり姿が見えなくなる。
阿久津の声「あれ、時計がない!」
東堂はポケットを上から触り、驚き、その場を走って立ち去る。

○カフェ
東堂が座っている。
机にはアイスコーヒー、星型のネックレス、高級時計。
店員(20)が東堂の横を通る。
東堂「すみません、僕、会社の社長です」
店員「え? あぁ、はあ」
店員は首をかしげて立ち去る。
東堂はポケットから店員のネームプレートを取り出し、天井を見る。
東堂「俺は社長だ」
東堂はポケットを触るが何もない。
腕を組んで考える。
× × ×
紙ナプキンに文字が書かれている。
東堂M「①嘘をつくと何かを盗む、②盗んだものはポケットにはいる。③相手がいる嘘じゃないと効果はない」
東堂はニヤりと笑う。

○商店街
東堂が女性に話しかけ、去っていく。
東堂がポケットから財布を取出し、微笑む。
東堂は別の男性に話しかけ、また去っていく。
東堂はポケットからブリーフを取出し、驚き捨てる。

○アパート『ラ・ヴォルール』・前
東堂が帰ってくる、腕に高級時計。
阿久津と、阿久津に腕をひっぱられている小泉銀次(51)が出てくる。
阿久津が、東堂と腕の時計に気がつく。
阿久津「あ、てめー、さっきの、それ、俺の腕時計じゃねーか」
阿久津が東堂の腕を掴む。
阿久津「てめー、あの時、盗んだのか?」
ビビって言葉がでない東堂。
小泉が東堂に気がつく。
小泉「あ、お隣さん?」
阿久津「てめー、『ラ・ヴォルール』を知らないって言ったのも嘘か? 」
東堂「あ、いや、あの」
阿久津「とりあえず、お前も事務所、来い!」
東堂は泣きそうな顔。

○ヤクザの事務所
神棚があり、壁には『仁義』と書かれた書が額に飾られている。
ガラスのローテブルの上に高級時計が置かれている。
床に血まみれの小泉が倒れている。
ビクビクと痙攣している。
横に正座させられている東堂。
阿久津は東堂に向けて拳銃をかまえている。
阿久津「てめー、いつのまに盗んだんだ。てめー、泥棒か?」
東堂は拳銃に釘付けになっている、たくさん冷や汗をかいている。
東堂M「本当のこと言ったら、殺される、ここは否定しないと……」
東堂「お、俺は泥棒では……」
東堂は慌てて口を閉じて、首をふる。
東堂M「待て待て、ここで嘘ついたら、また何か盗んでポケットにはいってしまう、そんなのバレたらそれこそ終わりだ、嘘はダメだ」
東堂「俺が……」
東堂が慌てて口を閉じる。
阿久津がイライラしてきている。
東堂M「いやいやいや、『俺が泥棒です』なんていったら、その瞬間に殺される。嘘もダメ、本当もダメ、俺はどうすればいいんだ……、あっ! どうせ死ぬなら……」
阿久津「おい、答えろ!泥棒なのか、てめー!」
東堂「俺は……、俺は泥棒なんかじゃない!」
阿久津の手から拳銃が消える。
阿久津がニヤリと笑い、ポケットから拳銃を取り出して、阿久津に向ける。
阿久津「て、てめー」
東堂M「賭け、成功! やった! やった!」
阿久津が懐からもう一丁の拳銃を取り出して、東堂に向ける。
東堂「え? 嘘でしょ?」
阿久津「この泥棒野郎が!!」
東堂が目を見開く。

○神社(夜)
赤い縁のメガネをつけた狛犬、ニヤリと微笑む。

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